さっきと違う。

さっきより。
隙がある……

うまく言えないけれど、何か……

「もう、飲んだ?」

小篠さんは、私に問う。
ふるふると首を振ると、「早くなー」と言い、机にもたれかかった。
私は、両手で持っている缶に目を移し、もう一度缶に唇をつける。
その時、怪我をした膝が視界に入った。

すっかり忘れていたが、見てみるとひりひりと痛む。

「あ、やっぱりまだ血が滲んでる…」

膝を折り曲げて、傷口を確認していると、小篠さんはチェアにかけてあったダンガリーシャツを放り投げ、顔を背けている。
狭い空間に緊張の雰囲気が流れ始める。

さっきから、私の膝の奥が、見えていたのかもしれない。
河川敷で見せつけようとしたそれが。

かあっと顔が熱くなった。
河川敷のような開放された場所と、この閉塞的な場所では、心持が違う。

ダンガリーシャツは小篠さんの匂いがする。
それを膝にかけると、小篠さんは腕時計をちらりと見た。