「ガキじゃねえから、こんなとこで、こんなことしたくねえの。わかる?しかもJK相手だ」

「うん」

「本当にわかってんのかよ」

小篠さんが笑いだす。嬉しくて、私も顔が綻ぶ。
「あーあ……」と小篠さんが私の腕を外し、私の自転車のスタンドを蹴った。

「おまえさ、笑うとかわいいよ。ずっと笑ってりゃいいじゃん」

「…そういうことさらっと言えるってすごいね」

今までキスを仕掛けていた側のくせに、褒められるとどうしていいかわからなくて、可愛くないことを言っちゃう。
そういうのに免疫がない。

「言えるよ。大人になるとな」

「私も早く大人になりたい」

「はは。バカだな。戻れなくなるのに」

「戻りたくないもん。じゃあ、小篠さんが戻れなくしてよ……」

小篠さんは、黙って私の自転車を押し始めた。
まだ名残惜しいけれど、やむなく私はその後について歩く。

空にはもう、星が出ている。
街灯のあかりでも心もとないぐらい、あたりは暗くなっていた。