夢見るキスと、恋するペダル

とろけていく。
何も考えられなくなって、幸せに似た何かで満たされて行く。
けれど、それは儚くて、ずっと続くものじゃなくて。
小篠さんが離れたら、消えちゃう。

唇が離れるのが名残惜しい。
が、小篠さんは呼吸を取り戻しながら、私をぎゅっと押さえる。

「ちょっと待て」

「いや、もっと……」

「犬のいろはですら『待て』ができたのに、何でおまえは待てないかなぁ」

小篠さんの「おまえ」はすごく、いい。
次のキスが待てなくて、抱きついたままじっと見上げた。
まるでしっぽ振ってるみたいにして。

気がつけばもうどっぷりと暗い。
いったん夕陽が落ちてしまうと、暗くなるのも早いものだ。