決して真面目と言われることに嫌気がさしているわけでも無いが、無性にしっくりこない。



そして、毎日当たり前のことをこなしているだけでなんの面白みもない自分に不甲斐なさを感じることもなくはない。


だから、私はなんの変哲も無いこの生活からちょっとした行動に出ることにしたのだ。



「ねる〜!花凛(かりん)ちゃん来てるわよ」



花凛はいつもタイミングが絶妙だ。



少し駆け足ででリズムよく階段を上るこの足音は紛れもなくお母さんではなく花凛だ。



そして、なんの躊躇もなく勢いよく扉を開けるのが花凛だ。


「ねるさ、明日の入学式でさ、賭けしない?」



話の順序立てもなく、急にわけのわからない話を振ってくるのも彼女の特徴だ。


「話がいつも突然すぎだよ(笑)なんの賭け?」



すると花凛は目をキラキラさせ私に訴えかける。


「どっちが先にイケメンとLINE交換できるかの賭け!」



「負けた方はなんかあんの?」



「うーん、そうだな。
あっ!最近できたロールケーキのお店あるじゃん。あそこのロールケーキ買って来るとか!」



甘党の花凛らしい回答だ。



「いいけどさ、あそこ2時間は並ばないと買えないよ?」



「だから!だよ?じゃ、私今から用事あるから明日校門前でね」



「あ、うん。じゃあね…」



いつも通り突如現れては風のように去っていく花凛は本当に自由人だ。


しかし、胸のあたりまで伸びた漆黒の髪にまんまるとした真珠のような綺麗な瞳、
口角の上がったほんのりと赤い薄い唇に筋の通った鼻というなんとも整ったルックスをしている花凛は小さい頃の頃から注目の的だった。


賭けは恐らく花凛の勝ちだ。



しかし、私は花凛との賭けを約束した矢先、
本当の賭けに出ようとしていた。