「これからはもう、思う存分言えます」
そう言って、唇が触れ合いそうな距離で神月くんが笑ったのがわかった。
「好きだよ、……灯里」
「……うん」
「ほんとに、すっごい好き……」
私も。
そう言おうとしたのに、口を塞がれて出来なかった。
好きにならないなんて、どうして思えたんだろう。
今では本気でそう思ってしまうくらい、私にとっての神月くんは大切な存在になった。
神月くんが私を大事に想って、私も神月くんを大事にして、そうしていつまでもお互いを大切にしていけたら。
そしたら、言葉に出来なくても、"好き"を禁止されても、ちゃんと気持ちは伝わるし安心出来る。
公園で、初めて好きだと言われた時。
誰かを想っている神月くんを綺麗だと思ったあの時から、私が神月くんを好きになることは多分決まっていた。
目を奪われて、ドキドキして。その瞬間から"好き"が始まったんだろう。
見ないフリをしたって無駄。気持ちに嘘をついたって無駄。
大切に想ってくれている人のことは、どうしてもわかってしまうものだから。
「他のこと考えてる」
「えっ、」
「もっと俺のこと見てよ」
見てるよ。
神月くんが思ってるよりずっとね。
後で教えてあげよう。
目の前の体を、もう一度強く抱き締めた。
fin.


