好き、禁止。


「……言ってもいいのか、わからなくなって」

「え……」

神月くんが不思議そうな顔をする。
自分はなんて面倒くさい人間だろう。

「神月くんのこと好きな私、すごく嫌な奴で。醜くてドロドロして、汚い感情まで出てしまうの嫌だったし。……まあ、恥ずかしくて言えなかったってのもあるけど」

「?なんですかそれ」

「へ?」

「ドロドロした気持ち。そんなの俺だってありますよ。だって誰にも盗られたくないですもん」

さらっと、当然だというように言ってのける神月くん。
堂々としていて、私より大人で。やっぱり神月くんはカッコイイ。

「俺だけを見ててほしいし、俺に全部見せてほしい。全部ですよ?佐野さんが醜いっていう部分も全部、俺だけに見せてほしい」

「……いいのかな」

「俺以外には駄目です」

「……なにそれ」

駄目だ、降参。
どうしたって神月くんには敵わない。
もしかしてこの人、正真正銘どこかの国の王子様なんじゃないだろうか。

「あはは!もう神月くん、ほんとかっこいい……」

「え!い、今のもう一回言ってください」

あれ、と思った。
格好いいだなんて、絶対言われ慣れてるはずなのに。
なんだか可愛く思えてきた。

神月くんの耳元に口を寄せて、小さく呟いた。

「……好きだよ」

「!!」

神月くんが耳を押さえて真っ赤になった。