どれくらいそうしていたのか。もうわからなくなってきた頃、お互いにゆっくりと体を離した。
目が合って、額をこつんと合わせて、なんだか可笑しくなってきて2人でくすくす笑った。
「……さっき、バックルームで言ったこと、すいませんでした」
「そんな、私こそ」
「最後にとか、困らせてますかとか、弱気なこと言いましたけど。……まああれは本気で言ったわけじゃないんで……」
「ん？」
本気じゃなかった？
あんなに辛そうな顔で、もう終わりにしますと言わんばかりの雰囲気だったのに？
「……嘘だったってこと？」
「……まあ、ああ言ったら佐野さんどんな反応するかなーと思ってカマかけてみたというか……」
まさか。
神月くんとこれきりになってしまうような予感さえしたのに。
もう私のことは好きじゃないのかもとさえ思ったのに。
「わ、私、ショックだったしかなり焦ったんだけど……」
「だって佐野さん、絶対俺のこと好きなのに全然言ってくれないし」
「なっ……！」
「そりゃ俺だって、手振り払われたりしたらさすがにショック受けますよ！……だいたい、俺言ったじゃないですか。もう何回目かわからないですけど、佐野さんのこと絶対に諦めないって」
「うっ」
それを言われると何も言えない。
というか、私がもう神月くんを好きになってたことは気付かれていたらしい。
一体いつから気付かれていたんだろう。もしかしたら私が自覚するよりも前なのかもしれない。
……そう考えたら、神月くんも宗ちゃんもお見通しだったのに、自分はどれだけ鈍いんだろう。
