好き、禁止。


バックルームに宗ちゃんが入って来た。
レジはもう1人の夜勤の人に任せているのだろう。この時間はもうパラパラとしか客も来ない。

「お前、最低やな」

「……」

宗ちゃんが呆れたように言った。
第三者から見てもそう見えるのかと、改めて落ち込む。

「さすがに、見てるこっちが可哀想になってくるわ」

「可哀想?」

どういうことかと聞き返すと、宗ちゃんがさらに眉間のしわを深くした。
なかなかに迫力があって恐ろしい。

「お前な、自分のことしか考えてへんやろ。王子は……神月は、お前に一回振られてんねんで?それでも諦められへんから、ずっとお前に惚れてもらおうと頑張ってるわけやろ?」

……そうなのだろうか。
果たして神月くんは、今でも私を想ってくれているのか。

「それやのにそんな風に、急にお前がよそよそしくなって誘いも断られて、あいつが何とも思わんとでも思ってるんか?」

「……」

「好きな奴にそんな風に避けられて、平気やとでも思ってるん」

ぐさっと、宗ちゃんの言葉が突き刺さる。
自分では避けていたつもりはないのだけど、今日の態度は結果としてそうなってしまっていただろう。
きっと前より距離を取ってしまっていた私のことを、神月くんはどう思っただろう。

「嫌われたんかなと思ってもおかしくないで」

「!そんなこと……!」

「だからそれを本人に言わなわからんって」

自分のことしか考えてない。
確かにそうだ。自分が上手く話せないから、緊張して顔を見れないから、こんな気持ち初めてでどうしたらいいかわからないから。
そんなのは、神月くんは何も知らないことだ。