第ニ章 ”好きって言いません”



「——はぁああ!?王子に告白されたぁ!?」

「ちょ、宗ちゃん声大きいって!」


ようやく実現した宗ちゃんとの飲み会にて。

お互いの近況を報告するのが恒例になっているので、この前神月くんに告白されたことを恐る恐る話したのだけれど。
宗ちゃんはそれはそれは驚いていた。

「まじか!へえ〜!王子って灯里のこと好きやったん!」

「絶対何かの間違いだと思うんだけど……」

神月くんが嘘をついているとは思っていないけれど、どうも現実味がないのも事実だ。
宗ちゃんが王子と呼ぶほどの人が、私のことを好きだなんて、未だにちょっと信じられない。

「ていうかお前、俺とこんなことしてて大丈夫なん?」

「え?どうして?」

「いや、付き合いたての彼女が違う男と2人で飲みにいってたら、そら良い気はせんやろ。やめてや、俺が恨まれる」

「……付き合ってないけど」

「……ん?」

「だから、付き合ってないって」

宗ちゃんは一瞬動きを止めた。
それから右手に持っていたジョッキをゆっくりとテーブルの上におろして、みるみるうちに目を丸くさせた。

「はぁああ!?お前、王子のこと振ったん!?」

「ちょ、だから声大きいって……!」

意味もなく両手をあわあわと彷徨わせている私を、宗ちゃんはバケモノでも見るような目で凝視した。
そんなに驚くことだろうか。

「……信じられへん」

そうぽつりと呟いて、また思い出したようにビールを一口飲んだ。