第一章 ”好きなんです”



彼、神月創(こうづき はじめ)と出会ったのは、まだ寒さが残る春のことだった。


「今日から一緒に働かせていただきます、神月創です。よろしくお願いします!」

背が高くて黒髪の、いかにも好青年といった感じの風貌。爽やかな笑顔で挨拶してくれた彼は、とても好印象だった。

「佐野灯里(さの あかり)です。よろしくお願いします」

接客業で培ってきた笑顔でそう返すと、神月くんは安心したように目元を緩ませた。



大学に進学したと同時に始めたコンビニでのアルバイトは、今年24歳になる今でも続いている。もう6年目だ。パートさんや社員さんを除けば私が1番のベテランで、夕方からのシフトはほぼ毎日入っている状態だ。

たまに、朝から昼までのシフトをこなす時もあるけれど、私の出勤時間はだいたい夕方5時から11時頃まで。
この時間に一緒に働くのは、いつも高校生と大学生の人達だ。

そしてこの春、新しく仲間入りをしたのが神月創くんだった。



「神月くん、接客の経験はあるみたいだから。佐野さんと一緒のシフトになることが多いと思うし、色々教えてあげて」

いつの間にか神月くんの隣に立っていた店長が、私に向かってそう言った。
はい、と頷いて、もう一度神月くんの顔を見上げた。
大学生みたいだから年下なのだろうけれど、最近の大学生は随分と大人びている子が多い。私の方が年下に見られてもおかしくないな、と思った。