そんな風に悶々と日々を過ごしていたある日のこと。
この日も、私と神月くんは2人して11時までのシフトだった。
入れ違いに出勤してきた夜勤のバイトの子に引き継ぎをして、レジ金の確認をして、お疲れ様ですと声をかけてバックルームへと下がる。
ジャケットを脱いでロッカーの中のハンガーにかけて、持ってきていたパーカーを羽織っていると、神月くんもバックルームに入ってきた。
「佐野さんお疲れ様でした」
「お疲れ様」
ああ、多分今日も一緒に帰ることになるんだろうなあと思い、今日こそ本気で遠慮して断ってみようかと考えていたのだけど、この日はいつもと少し違っていた。
「佐野さん、今日、」
「あ、うん。今日は……」
「少し時間もらえませんか?話したいことがあるんですけど」
「……うん?」
一緒に帰りませんか、じゃなかった。
話したいことがある。それは、いつものように帰りながら話すこととは、また違うのだろうか。
「駄目、ですか?」
そう言いながら神月くんは、首を少し傾げながら不安そうな顔をした。
そんな風に尋ねられたら、用事があるから無理だなんて嘘をつけない。きっと大勢の女の子が一発で虜になるであろう、そんな顔だ。
「いいよ、どうかしたの?」
「……ちょっと、大事な話なんで。隣の公園に行きませんか」
「?うん、わかった」
大事な話。どんな話だろう。
他のスタッフには聞かれたらいけないようなこと?何かの相談?もしかして今度こそ仕事の相談?
緊張で少しドキドキしながら、神月くんの提案を了承した。


