「じゃあこれを売り場に持っていって、減ってるところに補充してくれる?賞味期限が近いのが手前になるように並べていってね」
「わかりました」
売り場に戻ると、宗ちゃんがレジ打ちをしているところだった。品数が多そうだったので、隣に立って袋詰めの手伝いをする。
「お煙草もご一緒にお入れしてよろしいですか?」
「はい大丈夫です」
「1296円、丁度お預かりします。ありがとうございました」
「ありがとうございました!」
2人同時にぺこりと頭を下げた。
宗ちゃんとはさすがに息ぴったりだ。
「王子、真面目やなー」
ダンボール箱の中身と陳列されているカップ麺を交互に見ている神月くんを見て、宗ちゃんが言った。
「そのあだ名本気で使うつもり?」
「あかん?」
「嫌がりそうだけど」
「やめてくれって言われたらやめるわ」
宗ちゃんはニカっと悪そうに笑った。
男が男に王子と呼ばれるって、どうなんだろう。
「メロン王子のほうがええんかな」
「もっと嫌でしょ……ん?」
ふと、メロン王……神月くんと目が合った。と思ったら、すぐにそらされてしまった。
今私達のことを見ていたのだろうか。
「次の8時のお菓子補充は、宗ちゃんが教えてあげてよ。私レジ見とくから」
「よっしゃまかせろ」
またすぐに倉庫部屋で神月くんと2人きりになったら、さっきのことを思い出してしまいそうで嫌だった。
コンビニのバイトを始めて6年目、こんなことを考えたのは初めてのことだった。


