「好き、です」

「……え」

「佐野さんのことが好きなんです」



一瞬、本気で体が固まって動けなかった。
頭が真っ白になるっていうのはこういうことなのだろうか。

意味がわからない、というように口を開けたままパチパチと瞬きをする私とは対照的に、赤くなった顔を少し俯けている目の前の彼。
背が高いから、どれだけ下を向いていてもその恥ずかしそうな顔は私に丸見えだというのに。



夜の11時過ぎ。
人気のない公園は街灯やすぐ隣にあるコンビニのおかげで明るい。それに加えて綺麗な丸をした月が、遊具をほんのりと照らしている。

柔らかな風が彼の前髪を揺らした瞬間、はっとした。いつの間にか、彼が私の目を真っ直ぐ見ていたから。

綺麗だと思った。

彼と出会って、1ヶ月経った頃のことだった。