私は、彼とぶつかりそうになり、彼の広い胸に抱きかかえられるような格好になってしまった。か、身体が近い!!

「ご、ごめんなさいっ。」

 心臓が、飛び出しそうになるのを必死に隠し、逃げようとすると、肩をつかまれた。

 えっ!!

 レイの顔が、近づいてくる。私の好きな漆黒の瞳が、私を見つめている。

(な、何をするつもりかしら?!)

 期待と不安で、押しつぶされそうになっていると、彼が
言った。

「ん、あんた顔真っ赤だぞ。熱でもあるんじゃないのか。」

「だ、大丈夫。」

 あわてて、その場を立ち去った。


 こんな事では、心臓が、いくつあっても足りない。毎日そばで、会えるのはうれしいけど、同時に切ない。そして、寂しい。