真夏の暑さと店長は、二人の距離を近付けた。



「おつかれさまでした、明日もよろしくおねがいします」

定時で仕事を終え、バスで帰ろうとしたら…

「君、家すごく遠いんだよね?」



あのあと結局客がこないから、店長とバイト君とあたしの三人でずっとピットでおしゃべりしちゃって。

あたしの家はここからバスで二時間。

どこに派遣されるかわからないので、たまーにこういうこともある。


「そうですけど…」


「おい、亮次、駅まで送ってってあげてよ。
あ、こいつも今あがるから、車持ってるから送ってもらいなよ」

「え、俺?!
うん、別にいいよ。遠いもんね」

なんとさっきのバイト君に送ってもらえるらしい…小太りだけどすてきな店長だわ!
ラッキー!

「ほんとにいいんですかぁ??ほんとですか?」


とりあえず確認のため二回聞いてみたけど、やっぱりいいみたい。


ラッキー!
バス代出ないんだよね。
超ありがたーい。


「ありがとうございます!!」

「じゃあこっち来て。店長、おつかれさまでした」


亮次さんに言われるままピットをあとにする。


「乗って」


スタンドの前に停めてあった白いスポーツカーに案内された。

でも…
かなり…

ヤン車。

スモークは真っ黒。ホイールは銀ピカ。
ぶっとい排気管…

エンジンをかけたらものすごく低音のでかい音がボボボボってうるさい。


一瞬ドアをあけるのをためらった。

そしたら亮次さんはもう運転席。

あわててドアをあけ、車高がとても低いため腰をかがめて、身を縮めて乗り込んだ。

見た目よりも中は広くて綺麗にされていた。
座ったことのないシャコタンのスポーツカーの助手席にどきどきした。


なんとなくこの時に、またこの車に乗るような気がした。