「でっけぇ……」


2045年。


季節は桜の花びらが風に吹かれて舞い踊る春。



高校のものとは思えないほど巨大で立派な校門の前で、黒川 一翔(くろかわ いちか)は唖然としていた。



一翔の目に映っていたのは、その立派な校門に相応しいほど大きな敷地にそびえ立つ、校舎。


その周りを取り囲むように立ち並ぶ、体育館やテニスコート、図書館、食堂、寮などの施設。



学校だが、ここにいればきっと生活に不自由はしないだろう。



「ここ…本当に高校かよ…」



桜ノ宮第一学園高等学校。


桜ノ宮グループが経営する学校法人の一つであり、国内有数の進学校だ。



敷地面積は全国の高校の中で一番広く、東京ドーム10個分。



全寮制で、学校の敷地内には生徒全員がそれぞれ個室の部屋を持てる程大きな寮が完備されている。


学校内のほとんどの建物が西洋建築の影響を受けており、美しく繊細。



入学金、授業料、施設費等、全て合わせた金額は1000万を超えると言われている。




もちろん、そんな学校に入れるのは莫大な資金を持った、ごくわずかなお金持ち。


それも、才色兼備で優秀な人間だけだ。