「魔…法…?」
一翔は最初、聞き間違いかと思った。
しかし、聞き返した魔法という単語を否定する言葉も返ってこない。
ということは、春子がふざけているのか。
しかしそれも違うということが、春子のまっすぐな目から判断できる。
「なんだよ…魔法って。そんなのあるわけが…」
「確かに、科学の発達した現代では信じられないかもしれないわね。だけど、ありえないはずの力を、その史上最悪の男は持っていたのよ」
「いや…、いやいやいや!!そんなのありえねぇって!!」
一翔の中で魔法とは、小さいおじさんと同じレベルのもの。
つまり、ある確率が0に近いものだった。
というか、この印象は一翔だけのものというよりも世間一般的に考えて当たり前のものだ。
「…まぁ、気持ちは分かるわ。気持ちの整理はとりあえずおいておいて、とりあえず話だけ聞いてね」
春子は小さく息をついて、再び話し始めた。
「2032年1月1日。アーレン・C・クライヴという一人の青年は、1000人以上を殺害するという事件を起こした。だけど、この事件が史上最悪と言われる所以は数だけじゃないの」
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殺害された人々は、ほぼ全員が焼死体で発見されたわ。
いえ、発見されたというのは適切な説明じゃないかもしれない。
ニューヨークの街に、ゴロゴロと焼死体が転がっていたのよ。
発見するつもりがなくても、そこらじゅうに見つけられるくらいにね。
クライヴは無差別で、ニューヨークの人々を殺害していた。
ーー炎を操る、魔法を使って。

