「…お話が終わるまで、私は外に出ています」
一礼して外へ出ようとした紫月。
おそらく、一翔の個人的な話だということを悟り、配慮したのだろう。
しかし、春子はその配慮を拒否した。
「紫月、あなたも同席しなさい。この話を聞いて、一翔をどのように‘育てる’か決めるといいわ」
「…御意」
(いや、だから育てるってなんだよ…)
一翔には育てるという言葉が、もはや恐ろしいものにしか聞こえない。
「さて。じゃあ、話を始めましょうか」
机上に肘をつき、ゆびを組む春子。
その姿は、深刻な話をし始めるような。
もしくは、何か深刻な問題を抱えているかのようなものだ。
もっとも、この人は面白がっているだけだということが、隠しきれていない口元の笑みから判断できるが。
(この人、形から入るの好きだよな…)

