完全に危ないヤツだ。
(俺が!!)
「ですが、私などよりももっと良い人選はあると思います。私は人を育てるということに向いていません」
それでも紫月は喰い下がらない。
なるべく静かに物事を言っているようで、品を落とすことはないが、やはり少し焦っている。
そんな紫月をみて、春子はため息をついた。
しかし、こちらもこちらで喰い下がらなかった。
「…紫月。それはあなたが決めることではなく、私が決めることです。これは理事長命令よ。却下は認めません」
なんとなく重い空気が流れる。
戦況は、どちらも譲る気配はない。
(俺としては、できれば断ってほしいんだけどな…)
しかし、そんな一翔の心情を露知らず、紫月はその命を承諾した。
「…分かりました。理事長命令とならば仕方ありません。取り乱してしまい申し訳ございませんでした」

