「ここは…」
「理事長室よ♡」
「だろうな…って、そうじゃなくて」
このきらびやかな部屋は、富豪どもにとっては当たり前のものなのだろうか。
ほんの数時間だけでも頭が痛くなるのに、これからこんな生活をしている人間と仲良くやっていかなくてはならないのか。
そう考えただけで一翔は頭が痛くなるような気がした。
「さっ、そこのソファーに座って。あなたにこの学校とクラスについて説明するわ」
*****
「まず、こちらの手違いで間違った書類と備品を郵送してしまって、ごめんなさいね。私の指示が通っていなかったみたいで…。新しい書類と備品はこちらに届いているから安心してね」
この時の春子の笑顔は普段通りだったはずだが、一翔は妙な違和感を感じた。
なんとなく、嫌な予感がする。
「備品って…」
「あぁ、制服とか…まぁ、もろもろよ」
このあたりから、話の雲行きが怪しくなってくる。
(制服?)
今、一翔が着ているのは黒いジャケットの基準服だ。
隆之介も、その他の男子生徒もみんな同じものだったのは、先ほどの始業式で確認している。
これ以外の制服といえば…。
「あと、寮のことなんだけど、そっちも間違ってたらしくって…。建物自体が別のものになるわ」
(寮も別…)
嫌な予感が、確信に変わっていく。
「学校のことは、あの子から聞いてもらえればいいと思うんだけど…、もうすぐ来るかしら?」
春子がドアの方へ目を向けた瞬間、
ポーン…
エレベーターがついた音が鳴る。
「あら、噂をすれば」
コンコンッ…
「どうぞー!」
「失礼します」

