(あの白い集団に関わることは、一生ねぇな)



一翔はそう心の中で呟き、視線を前方へ移した。



この予想が思いもよらない形で裏切られることを、一翔はまだ知らなかった。










「いっちゃーんーー!!」



「えっ!?」


始業式が終わってから約20分後。



Sクラスが退場し他の生徒も退場した後、ようやく外に出れた一翔にかけられた、能天気でふざけた声。(ちなみにこの時、一翔の隣には隆之介がいた)




振り返ると10mほど先から手を振って走ってくる女性の姿が見える。



「あっ、春…じゃねぇや、理事長!!」



その女性は黒いタイトスカートのスーツに長い脚がマッチしている、理事長姿の春子だった。



「いいわよ、“春子さん”で♪」


春子は一翔の両親と同級生で、2人はもう知った仲だ。


しかし、隆之介がいるこの場面で春子さんと呼んでいいのか、一翔が一瞬悩んだ結果、出てきた呼び方が理事長だった。



まぁ、この気遣いは不要だったらしいが。