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「以上をもちまして、始業式を……」
講堂内に流れるアナウンスを聞いて、紫月は
周りに気づかれない程度にため息をついた。
時刻は午前11時30分。
予定通りの終了時刻だ。
(ここは…息苦しい……)
もともと、人ごみは得意な方ではない。
人の集団、特に自分に注意が向いている時は、決まって気分が悪くなる。
視線が刺さる。
感覚が鋭敏になる。
(だから苦手なんだ、こういう場所は)
2度目のため息をつきそうになったとき、紫月は隣から声をかけられた。
「紫月がため息をつくなんて、珍しいこともあるのね」
「…杏華」
明るい栗色の髪のボブヘアーで、大人っぽい印象の同級生ーー西園寺 杏華(さいおんじ きょうか)が、茶化すように話しかける。
「私だって、ため息くらいつく」
「ふふっ、そうよね。ごめんなさい。いくら紫月でもまだ人間らしいところは残ってるわよね」
杏華の言葉に紫月はどういう意味だ、と言わんばかりに顔をしかめた。
杏華はさして気にする様子もなかったが、別の話を振る。
「そういえば、紫月。ここに入る時、何かに反応したでしょう?面白いモノでも見つけた?」
「…なんで分かった?私があるモノに反応したことが」
だが、変えたはずの話題もさらに紫月の表情をキツくするものとなった。

