「…そっかぁ…高校生でも、本気で恋、してるんだね」

信夫の言葉に、夕陽は笑顔で頷いた。

「…でも」

信号で、車が止まった。

「…信夫さん?」
「…随分年の離れた彼氏だよね?」

「…そうですね、でも、圭吾さんは大人だから、色々私を守ってくれるんです」

「…夕陽ちゃんは、自分のために、高校卒業するまで、寮に居ることを勧めるよ」
「…え?」

どうしてなのか?

「…君はまだ高校生だ。これからまだやらなきゃならない事が沢山ある。もちろん、恋愛も大事なことだよ。でも、だからこそ、残りの高校生活を彼氏一色にしてしまうのは、どうかと思うよ。夢だってあるんじゃない?」

「…あります」

「…それじゃあ、今は、その夢に向かって真っ直ぐに歩いていくのが賢明だと思う。その事を彼氏とよく話したらいいよ。彼は大人なんだろ?話せばわかってくれる。週末には、自宅へ帰れるんだし、毎日会う必要もない。よく考えて」

「…はい」

信夫の言葉は最もだった。

圭吾と両思いになって、それからは、圭吾一色だったと思う。

『夢』の事なんて、すっかり忘れていた。

…圭吾は夢の話をしたら、応援してくれるだろうか?

週末まで、夕陽はそんなことばかり考えていた。

そして迎えた週末。

信夫に背中をおされ、自宅へと戻っていった。