イケメン兄の甘い毒にやられてます

「…はい」

俯く夕陽の横を通りすぎて、明が玄関のドアを開けた。

「…夕陽を迎えに来ました」
「…夕陽ちゃん、圭吾が迎えに来たよ」

「…」
「…夕陽、帰ろう」

夕陽は俯いたまま小さく頷くと、圭吾と共に、自宅へ戻る。

その途中、夕陽がいつもと違う様子に、圭吾は声がかけられなかった。

自宅に着き、家の中に入ると、夕陽は圭吾の顔を見ようとせず。

「…迎えに来てくれてありがとう…おやすみなさい」

そう言って、自室に入ろうとした。

が、圭吾が夕陽の手を掴み、止めた。

「…夕陽、何かあった?」
「…何もないです」

相変わらず顔は見ない、目も合わせない。

「…夕陽、相良と何かあった?」

ほんの微かに、夕陽の手が反応した。が。

「…何もないです。疲れたから、おやすみなさい」

ほんの一瞬、目を合わせた夕陽は、微笑みを浮かべると、逃げるように部屋に入る。

「…夕陽、一緒に寝てもいい?」
「…ダメ!…もう、一緒に寝ません」
「…ゆ」

バタンと勢いよくドアを閉めてしまった。

…ドア一枚。

そのドア一枚が二人を遠く遠く離してしまった。

夕陽は、その場にしゃがみこみ、声を出さずに泣いていた。

圭吾にあれほど信用するな、たいていくなと言われていた相手なのに。

圭吾の事になると、我を失いついていってしまった自分の落ち度。

まさか、明があんなことをするなんて。

好きでした訳じゃない。

でも、してしまったものは取り消せない。

もう、圭吾に顔向け出来ない。