…仕事中、圭吾はカルテを抱えて廊下を歩いていると、入院患者を気遣いながら、楽しそうに話す夕陽を見つけた。

ずっと、可愛いと、夕陽の事を見てきたが、この日を境に、夕陽を見る目が変わった。

『綺麗な女性』

今の夕陽には、その言葉がピッタリだった。

仕事中の夕陽は化粧っけはほぼない。

他の看護師はそれなりに綺麗な化粧を施していて、綺麗な人も多い。

それでも、化粧っけのない夕陽が、これほどまで綺麗になるなんて。

圭吾は嬉しさとモヤモヤな気持ちで、一杯になった。

…話終えた夕陽が、こちらに向かってあるいてくる。

圭吾はすぐ近くの部屋に身を潜めた。

「…ひゃっ!」

目の前に来た夕陽を、圭吾はその部屋にひっぱりこんだ。

部屋の中は薄暗く、夕陽は怖くなった。

知らない人にこんなところで抱き締められてるのだから当たり前だ。

「…やっ!」
「…夕陽」

知ってる声に、ジタバタしていた夕陽の動きが止まる。

「…ゴメン、夕陽。驚かせて」
「…圭吾、さん?」

「…少しだけ、こうさせて」
「…し、仕事中」

「…1分だけ」
「…圭吾さん、どうしたんですか?」

訳の分からないといった感じで、夕陽が問いかけた。

圭吾は溜め息をつき、ボソッと呟いた。

「…夕陽、これ以上綺麗にならないで」