シャワーを捻り熱いお湯をかぶると、一体、私はなぜ泣いていたのだろうかと思ってしまう。


 これも榊田君の乱入で馬鹿らしい展開になったからだろうか?


 仁くんの淡い微笑は私をセンチメンタルな気分にさせ、榊田君の仏頂面はセンチメンタルを吹き飛ばす。


 まったくもって対照的な二人。


 それでも本質的なところが似ていて、私はそこに惹かれる。


 ずっと、好きなのだろう。


 これからもずっと。















「あれ?」



 濡らした髪を掻きあげて、鏡をふっと見ると首筋に赤い跡。


 虫さされかと、鏡にずいっと近づく……と、かぁ~っと顔が熱くなった。


 そ、そうだ。


 仁くんが来る前の出来事がさまざまとよみがえってくる。


 もしかして、仁くんに見られた?


 これは確実に気づく。


 今日の服ではギリギリで隠れている……ような気がする。


 仁くんも榊田君も何も言わなかったし、首筋に視線も感じなかった。


 だから、ギリギリで隠れていたのだ。


 そうに決まっている。


 記憶が色濃くよみがえったことで、明日の約束のことも思い出す。


 どうしよう。


 雰囲気に流されて、大胆な約束をしてしまった。


 いや、いや。


 雰囲気に流されただけではない。


 断じて。


 そう、榊田君が好きだからだ。


 だ、だけど。


 今さらになって、怖じ気づいた……のかも。



「違う!ち、違う!断じ……うがっ!」



 そう発狂し、無意識に立ち上がると洗面器に足をとられてすっ転んだ。



「い、いちゃ~い!う~いだ~いよぉ~」



 お尻を激しく打ちつけ、涙目になりながらさする。



「あ、あっ!痣になってたりしたら!」



 よりによって、はじめてで痣になったお尻を見られるなんてことは。


 慌てて確認したら、たぶん痣にはなっていない。


 ……というより、本当に明日。


 本当に明日!?


 本当に明日ですか!?