私はどういう顔をすれば良いのかわからず曖昧に頷いていた。
「昨日なんか、飲み屋で女の子だけじゃなくて男にまでからまれて、その男が俊の肩を抱いた瞬間、吹っ飛ばしたね。本当に殺しかねない勢いでさ。もう手のつけようがなかった」
「榊田君が人を殴ったの!?」
これまで榊田君が誰かを殴ったりしているところを見たことはない。
橘君とひと悶着あったとは聞いたけど、榊田君が怒る理由もわからなくないからお説教は一時間で済ませた。
ま、広君たちを羽交い絞めにしているのは良く見かけるけど。
あれはかなり苦しそうだ。
それも冗談で済む域。
吹っ飛ばすのはタダ事じゃない。
「普段表に出さないのに、それが出てしまうほどの欲求不満があるね。小春ちゃんと喧嘩中なのも相まって、もうイライラが抑えられないみたいだ」
話す気になった?と目で訴えてくる広君。
私と榊田君って、そんなにわかりやすいのだろうか?
朔ちゃんと小夜ちゃんだけでなく、広君にまでも。
というより、私以外は恋愛経験もそれなりにあるし、鋭いからわかるのかもしれない。
もう勘付かれているならと、私は腹を括った。
雨の日の出来事と、二週間前の出来事を私の記憶で覚えてる限りのことを話した。
すると広君は、あっはっはっ、ぐっほっほっ、と大笑いしてテーブルに額を押し付け打ち震えた。

