「もっと簡単なのは、小春ちゃん」
悪戯っぽく言う広君。
「それはどんな方法?」
「もう別れる、って一言小春ちゃんが言えば、意地を張って悪かったって俊の方から謝ってくるよ。これで立場逆転」
「広君まで面白がって!」
唯一の味方の広君まで私をからかう側にまわっているようだ。
「傍から見れば、ただの痴話喧嘩。普段、仲が良い分珍しいから一層面白い。俊が小春ちゃんを振るなんていうことはありえないしさ。みんなには良い余興だよ」
普段、仲が良いというのも若干引っかかる。
みんなの仲が良いは私が榊田君を叱っている時をさすのだから。
「痴話喧嘩ね。それなら良かったけど。私のこと榊田君は軽蔑してる」
「俊のやつ相当お冠だね。普段、砂糖に蜂蜜をかけたくらい小春ちゃんに甘い俊が耳貸さないんだから。で、喧嘩の根本的解決を図りたいなら話してくれない?」
それは、何とも話しにくい。
それこそ、朔ちゃんたちより話しにくい。
異性にこういうことを相談するのは同性でも躊躇してしまう私には難関だ。
でも、広君なら榊田君に近いから解決してくれるかもしれないし、同性ということで気持ちもわかるだろう。
一人、頭の中で葛藤をしていると、広君がコーヒーカップを持ちながらとんでもないことを言った。
「最近、二人が喧嘩する前からだけど。俊が妙にイラついてて。その原因は欲求不満ではないかと思うんだ」
口に何も入れてなかったのに、私はのどを詰まらせて、胸をどんどんと叩いた。
「え、え、えっ!?さ、榊田君が何か言ったの?」
「いや。男だけで飲みに行けば、そういう話が出る。俊はいつもクールぶって適当に聞き流してるのに、ここ数か月はそういう話を聞くのも嫌という、潔癖純情ぶりなんだ」
広君は思い出し笑いをして、続ける。

