「仁くん!」
駆け出した勢いのまま仁くんの腕を掴み、飛び跳ねた。
こんな偶然があるなんて。
「驚いたぞ?遊びに来てたのか?」
「うん、広君と映画の試写会に」
そこではた、と広君を探した。
広君を置いてきてしまったが、一直線道路だから何ら心配なく、広君は一歩後ろにいた。
「こんにちは。小春ちゃんや俊からお噂はかねがね聞いています」
「はじめまして。俺も小春から広君の話は聞いているよ。いつもお世話になっているようでありがとう」
二人とも元から愛想が良いから、にこにこと握手をした。
「しかし、小春。こんな良い男が身近にいながら、どうしてあんなガキと付き合うんだ」
また始まった。
「仁くん!そういう言い方ダメでしょ?」
唇を尖らす私に対して、広君は大照れした。
「いやぁ~!そう言っていただけると。小春ちゃんとは相思相愛で、俊よりお似合いだって良く言われるんですよ!しかも二人は喧嘩中でこれはチャンスですかね?」
二人の社交辞令は何だか似ていて、気が合っているようだ。
広君はわざと余計なことを言ったような気がしてならない。
「榊田と喧嘩してるのか?まったく、小春に気苦労をかけるなんてあいつは自分の立場をわかってない」
「ヤキモチを妬いているんですよ。もう、やけ酒に付き合わされてこっちの身が持ちません」
とか言いつつ、榊田君を餌に女の子を釣って広君たちは楽しんでいるのは確実だ。
「仁くん。明日、無理かも。榊田君がダメだって」
ここで会えただけ良しとして、榊田君への信頼回復に私は努めないといけない。
この恋を大事にしたいし、榊田君を大事にしたい。

