楓side





『汐ちゃんが誰と恋人になろうが楓にはカンケイないでしょ?』



隼人の言葉が俺の心を突き刺す。
さっきから何度もリピートされる。


今までは普通だと思っていた。


これから先、他の奴と付き合う気なんて絶対に有り得ないから汐と付き合うのだと思っていた。


というより、目の前で汐を隼人に取られるなんて思いもしなかったこと。


隼人が想いを寄せてたことは知っていた。


汐は誰が見ても可愛いし性格まで綺麗。
優しくて天然で守ってやりたくて…、



「…2人共、そんな顔されてご飯食べられててもうざいんだけど。」


「うるせー、陽。」



陽(ヒナタ)は霧原家の3男で中3だっけ?
覚えてないけどそれぐらい。


部活と彼女にしか頭がない弟だ。



「てかさ、楓君まで機嫌悪いって珍しいね。
2人に共通することは汐ちゃんだ。

汐ちゃんにでも振られた?」


「…隼人に取られた。」



それだけがムカつく。
隼人に取られたということだけムカつく。


確かに汐は誰のものでもないけど、
小さい頃から俺だけのものだ。



「へー、隼人君に?
じゃあ汐ちゃんはもう彼氏持ちなのか。」



成長したねー、と言いながら俺達を見てクスッと笑った陽。