通りに面した側は、すべて腰辺りから上を全面ガラス張りにしてあり、外からの光が最大限入るように工夫され、木枠は温かみのある木材で、少しアンティークのような施しがされていて、深みのある趣。

今は、室温を快適温度に保つために、ピタリと閉まっているけれど、実は出入り口の扉以外は1メートル幅の稼働式嵌めこみ扉で、季節や朝晩の寒暖によっては、全面開放できるような造りになっている。

お店の前には、所狭しと色鮮やかなガーデニングの草花。

一見すると、花屋の店頭と、見間違えてしまいそうになる。

無機質なビル群の中で、“オアシス的存在のカフェ”がコンセプトだと豪語する、オーナーである渚ちゃんたっての希望で、ガーデニングが趣味の伯母が、定期的に手入れをしに来ているらしい。

『あ、今日のランチ、ロコモコだって!』
『ここのランチ、絶対ハズレ無いよね』

通りすがりのOLさん達が、今出したばかりの黒板を見て、会話しながら立ち去っていく。

場所柄、商談に使えるようなシックなお店が多い中で、比較的気軽に入りやすく、味もコスパも申し分ないと、この辺りのOLさんの間では、密かに人気が高いらしい。

自分のお店ではないけれど、ちょっぴり誇らしい気持ちで店内に戻ると、渚ちゃんに言われた通り、入り口付近に座っているお客様に、コーヒーのお替りをお持ちする。

確かに彼女の言った通り、本を読むことに集中していたらしいお客様のカップは、ほとんど空っぽの状態だった。