そうしてそんな日が続くうちに、8月もお盆に入り、オフィス街の各企業も長期休暇に入るところも多く、朝のこの時間は、閑散としていて、人通りも少ない。

オーナーの渚ちゃんにも、“この期間、朝の時間は休業にしても良いよ”と言われたけれど、自分自身がなんとなくこの生活のサイクルに慣れてしまっている上に、悲しいことに取り立てて用事もないので、いつも通りの時間でお店を開けていた。

それに、この期間も変わらず小野崎さんは定刻にやってくるので、売り上げが0円というわけではなかった。



お盆も、明日の日曜日で終わりという土曜日の早朝。

いつものように、来店した小野崎さんにモーニングセットを持っていくと、これもいつも通りの笑顔で『ありがとう』と受け取ってくれる。

『明日で、お盆も終わりだな』

小野崎さんは、読んでいた雑誌を閉じると、プレートの上のコーヒーカップに手を伸ばす。

『はい、一般的にはそうですね』
『一般的には…か、確かにそうだな。俺的には全く休んだ気がしないけど』

この期間も、毎日通っていた小野崎さんは、自虐的に笑うと、ブラックのままコーヒーを口にしてから、『ところで、エリ』と、居住まいを正す。

『一つ聞きたいんだが…』

いつもの質問タイムだ。

『はい、何でしょう?』

もう、日々の恒例になっているこのやり取りにもすっかり慣れ、今日はどんな質問なのかと、気楽に構えていると、今日に限って予想外の質問が降ってきた。

『君は今、好きな男性はいるのかな?』
『は?』
『ああ、ごめん、今のはさすがに直球過ぎたかな?そうだな…じゃあ、付き合っている彼氏がいるのか?という質問に変えよう』