明日、君を好きになる



チリンチリン…

午前6時7分。

入口のベルの音が鳴る。

『おはようございます』
『おはよう、エリ。いつものよろしく』

あの日からも変わらず、彼(小野崎さん)は同じ時刻にやってきて、同じように過ごしていく。

意外だったのは、思っていたより、彼が紳士的だったこと。

もっと、軽い感じの人だと思っていたのだけれど、あの日のように私を呼び止めて、根掘り葉掘り聞いたりなど、全くしない。

…ただ、やっぱり宣言通り、私を名前で呼ぶことと、なぜか毎朝、モーニングセットを持って行った際、必ず一つだけ質問をしてくるのが、新しい日課になっていた。

『エリ、好きな色ってある?』

『一番好きな食べ物って何かな?』

『エリは、ペット飼ってるの?』

『エリって、友達になんて呼ばれてる?』

正直、毎度されるその質問の意図はさっぱりわからない。

その上、その答えから会話を膨らませるつもりはないらしく、大抵は私の答えに、『なるほど』とか『そうなんだ』と、うなずくだけ。

最初は、何を考えているのか分からず、いちいち身構えていたけれど、よく考えてみたら、バーで仕事をしているくらいだから、毎日のように、綺麗な大人の女性に囲まれているはず。

だからきっと、私のような普通の女が珍しくて、少しからかわれているだけなのだと、理解することにして、実際大した質問もされないので、出された質問には、その都度正直に答えていた。