明日、君を好きになる

『でも江梨子、この先どうするかって、考えてるの？』

朋美とは対照的に、齢28歳で生涯独身を決め込んでる、超現実主義者の千春が真顔で聞いてくる。

『まだ、考えてないけど…いつまでもフリーターって訳にもいかないし…』
『ねぇ！この際、永久就職でもしちゃえば？』
『永久就職…』
『朋美はすぐそうやって、結婚、勧める』
『だって手っ取り早いし。相手さえ選び間違えなければ、玉の輿も夢じゃないでしょ！』

当人は、いたって普通のサラリーマンと結婚し、2年前には待望の子供まで産まれたというのに、いまだに一番、夢みたいなことを言っていた。

目を輝かせる朋美に感化され、隣に座る千春も『ま、それも一つの選択よね』と同意を見せる。

『で、どうなのよ？』
『どうって？』
『いるの？そんな人』
『いるわけないでしょ。彼氏だっていないのに…』
『ほら、彼氏じゃなくても、誰か周りに、イイ男いないの？』

問われて一瞬、（ほんの一瞬だけ）小野崎さんが浮かんでしまったけれど、急いで打ち消して、きっぱりと否定。

『残念ながら、全くいません』
『なんだぁ、つまんない』
『そううまくいかないものよね』

ガックリと肩を落とす二人。

実際のところ、今はまだ、自分の中でその（結婚）選択肢は、全く無かった。

そもそも、相手がいないのだから、考えようもないのだけど…。

とはいえ、年齢的にも、そうのんびりもしていられないのも充分わかっているだけに、気ばかりが焦る。

ちょうど、運良く運ばれてきたお料理に話題が移り、いつの間にか、この日集まった本来の趣旨である、友人の結婚式のお祝いの話に、切り替わっていった。