今更ながらに、自分の君に対する気持ちがわからなくなった。

このまま君と、”カフェ店員と客”という関係で、終わりたくはない。

その気持ちは、少し前からもうハッキリと自覚しているのだが、それでもまだ迷いがあった。

自分の今の器で、これから新しいことへチャレンジする君を支えていけるのか?という不安。

…昔、傷つけた恋人のように、自分の許容のなさが、相手を苦しめることにならないだろうか?

第一、こんな未だ中途半端な俺を、君は受け入れてくれるのだろうか?

いろいろな感情が頭の中を巡り、一向に答えは出てこない。

そんな俺に、君は初めて、カフェ店員としてではなく、声をかけてくれた。

それは、ほんの短い気遣いの言葉だったけれど、もしかしたら君の気持ちが少しでも自分に、動いているのかもしれないと思うと、たまらなく嬉しくなった。

俺は、また懲りもせず、もう一度君を誘ってしまう。

君は変わらず、先の理由で断るも、俺は即座にその理由を撤回し、退路を塞ぐ。

流されて、口から出まかせを言ったわけじゃない。

ただもう、頭で考えるより行動が先走ってしまった結果だったけれど、口にした言葉は、ストンとそのまま、自分の本心だ。

君はすごく動揺しているようだった。

期せずして現れた来客のために、君に伝えることのできなかった言葉は、あの時きっと君を困らせるだけだったかもしれない。

30過ぎの大人の男が、何やってんだと、我ながら呆れ果てた。

それでも、君の俺を否定する言葉の裏側に見え隠れする、微かな情愛を感じて、諦めることができなかった。