明日、君を好きになる

『えっ…』

広い公園を囲む鉄柵の向こう側は、暗い海。

そのすぐ先に広がるのは、淡いオレンジ色の光を纏った工場のプラント郡。

いくつかの煙突からは、白く吹き上がる煙。

そこは、何とも幻想的な景色が広がっていた。

もちろん、その光景だけでも絶景なのだけれど、それ以上に心を奪われたのは…。

『圧巻だな…』

隣で、小野崎さんが感嘆の声を漏らす。

さっきくるりと廻って来た”建物”だと思っていたものは、大きな橋を支える支柱の一つで、その上には、巨大なつり橋である、”横浜ベイブリッジ”。

その特徴的な、淡いブルーに輝く斜張橋を、下から見上げるように望み、その先に広がるのは、みなとみらい地区の鮮やかな夜景。

『凄い…』
『想像以上の絶景だ』
『小野崎さん…これを、私に見せてくれようとしたんですね』
『ん?ああ…いや、まあそうなんだけど…』

そう言いながら、繋いでいた右手を解き、腕時計をチラリと見る。

時刻はもう10分もすれば、17時を過ぎる。

ふと海からの冷たい風が、私達の頬を掠めた。

『エリ…』

目の前の柵に手をかけて、小野崎さんがこちらを振り返る。

『君の返事を聞く前に、話しておきたい事があるんだ』

唐突に、いつもよりワントーン低めの声音でそう切り出す。

ドキッ…


“返事は次に会った時に…”


そういえば…と、すっかり忘れかけていた記憶がよみがえり、適度な緊張感で、身体が強張った。