明日、君を好きになる

『実際、仕事を途中で抜けたのは事実だし、その後すぐに辞めてしまったから、タイムリー過ぎてそういう噂がたっても仕方ないけどな。そもそもこの俺が、仕事を放って女のところに行くなんて前代未聞だろうから、そりゃ面白がる奴はたくさんいる』

まるで、他人事のようにサラリと言い、一瞬チラリとこちらを見る。

視線が合い、慌てて顔を正面に向けた。

『じゃクビになったっていうのは…』
『嘘だよ。第一、エリには言ってなかったけど、バーのオーナーは、俺の大学の時の先輩でね。いまだに”戻って来い”って、しつこいくらいだ』

心なしか、ホッとした。

もしかしたら自分のせいかもしれないと、本気で心配していたから。

『怒ってない理由は、それだったのか…』
『…怒る?』
『あんな思わせぶりな態度をして、突然姿を消すとか、怒られて当然だよ』

言われて、つい忘れていた感情を思い出す。

自分が原因かもしれないと知ってからは、すっかり忘れていた感情。

確かに…、”それならどうして、私の前から姿を消したの?”

その質問を投げかける前に、小野崎さんが口を開く。

『渚さんにも、めちゃくちゃ怒られたし』
『渚ちゃん?』
『ああ、今朝てっきり君がいると思ってカフェに行ったら、君ではなく渚さんがいて、俺の顔を見るなり、凄い剣幕で叱られた』
『…今朝』
『エリ、モーニングのシフト替わったんだって?知らなかったから、びっくりした』

その時のことを思い出したのか、苦笑いしながら話す。