明日、君を好きになる

信号が赤になり、静かに車体が停止すると、それを待っていたかのように、今度は、小野崎さんの視線が、真っすぐこちらに向き直る。

『…怒ってる…よな?』
『え?』
『突然、君の前から姿を消して…ごめんじゃすまないけど…』

運転席から、ポツリとつぶやくように囁いた。

私がずっと黙っているから、誤解されたのかもしれない…。

『別に、怒ってるわけじゃ…』

言ってから、不意に小野崎さんが自分のせいで、バーを辞めさせられたことを思い出す。

『謝らなきゃいけないのは、私の方です』
『?なんで、エリが謝るの?』
『聞きました…私が原因でバーを辞めさせられたって。あの日…最後にあった日、私の為にバーのお仕事を途中で抜けてしまったから…ですよね?』

いつだったか、バーの店員らしき男性達の会話を思い出す。

信号が青に変わり、小野崎さんは視線を前に戻すと、ゆっくりアクセルをふみながら、呆れたようにため息をつき『誰がそんなことを…』と、つぶやいた。

『…違うんですか?』
『もちろん、違うに決まってる。バーは、自分の意志で辞めさせてもらったんだ』

真剣な表情で、真っすぐ前を向いたまま続ける。

その横顔は、嘘をついているようには見えなかった。