明日、君を好きになる

車内は、お店に入る直前までエンジンが付いていたのだろう。

ほんのり暖かく、このセーターのおかげもあるけれど、寒さは微塵も感じない。

小野崎さんも直ぐに運転席に乗り込み、エンジンをかけると、年末押し迫る師走の街中を、急ぎ走り出す。

さっきから早音を打つ鼓動を抑えて、先ずはいまだ理解できていない頭を整理して、自分の身に起こっていることが、現実であることを認識しようと努力する。

いつも見慣れている、駅まで左右に続く眩しいほどのイルミネーションが、今や全く目に入らない。


”これは、自分の都合のいいように見ている夢じゃないよね?”


チラリと運転席を盗み見て、ハンドルを握る男性が、この数カ月ずっと会いたかった想い人であることを確認するも、未だ現実味が沸かない。

目を逸らした瞬間、消えていなくなるような気がして、視線が動かせなくなる。

『…エリ』
『え』
『あんま見られると、運転に集中できない…』
『!!』

言われて、咄嗟に視線を逸らすと、急に今が現実であることの認識と、同時に車内に広がるあの懐かしいシトラスの香りがして、ここが小野崎さんの車の中であり、且つ二人きりの密室空間であることを思い出す。

途端に跳ね上がる心音が、また別の緊張感を増長させた。