明日、君を好きになる

ほどなくして、咲ちゃんが大きな紙袋を持ってくると、何故か私ではなく小野崎さんへ直接手渡し、彼もそれを抵抗なく受け取っている。

『これ、江梨子さんの荷物、全部入ってます』
『ああ、ありがとう』
『恭介君、わかってると思うけど、これ以上エリィを泣かせたら、本気でこの店出禁にするわよ』
『一応、肝に銘じておきます』
『ちょっと、”一応”って何よ?』
『もう、彼女を泣かせるつもりはないので』

確信を持ったように笑顔でそう言うと、初めてこちらに向き直り、そのまままっすぐ私の元に向かってくる。

ドキッ…

さっきから続く鼓動が、さらに高鳴っていく。

『エリ』

ずっと、耳の奥にかすかに残っていたあの声音で、私の名を呼び、手を差し伸べる。

『一緒に来てほしい』

一瞬戸惑い、トレイを胸に抱いたまま、救いを求めるように渚ちゃんを見るも、いつもの笑顔で『行ってらっしゃい』と後押しする。

いつの間にか、近くにいた咲ちゃんに『エプロン、預かりますね』と言われると、持っていたトレイと共に、腰に巻いていたカフェエプロンを外し、ぎこちない仕草で手渡した。

『江梨子さん、お疲れさまでした』

何故か泣きそうな瞳の咲ちゃんに挨拶されると、それを待っていたように、空いた手を取られてしまう。

『行こう』

チリンチリン…

鈴の音を響かせて、先ほど入ってきたドアを開け、暖かな場所から一気に冷たい歩道へと歩き出す。