明日、君を好きになる



時刻は、まもなく午後4時。

店内はお客も少なく、ゆったりとした時間。

ちょうど、アップテンポな曲が終わり、ハワイアンバージョンのホワイトクリスマスが静かに流れる。


チリンチリン…


鈴の音のような軽やかな音と共に入口のドアが開き、来店者が淀みない足取りで、店内に入ってきた。

振り向いて、今入ってきたばかりの客を確認するも、いつもなら反射的に言葉にするセリフが出てこない。

すらりとした長身に、グレーのニットセーターと黒のスキニーパンツ。

ツーブロックのマッシュショートの髪形は、記憶にある明るめのカラーから少し落ち着いた色に替わっていた。

呼吸の仕方を忘れたように、上手く息が吸えないくらい動揺する。

その男性客は、ほんの一瞬こちらをちらりと見て、そのまま迷わずカウンターに向かう。

『遅くなりました』

内側にいた渚ちゃんは、驚くよりも前に、小さな溜息と共に、心なしか怒ったような声音で話し出す。

『遅いわよ、何時だと思ってるの?恭介君』
『すみません、いろいろ準備もありまして』
『全く、待たせすぎなのよ…で?用意はできたんでしょうね?』
『はい、もちろん』

突然現れた謎の男性と渚ちゃんのやり取りに、カウンターの二人も唖然として見守っている。

こちらは、唐突に打ち出し始めた心拍数を抑えるように、木製のトレイを胸元でしっかり握りしめたまま、立ち尽くすしかなかった。