『待って…』
『ん?』
『ちょっと、待ってください…』

小野崎さんの突然の告白に、さっきから頭の中が混乱していて、うまく整理できていない。

自分の心臓の音だけが、やけにうるさく感じる。

だって、こんなことになるなんて、想像もなかったこと。

いろんな感情が、湧き上がって、自分の中で答えが出てこない。

『…だって、小野崎さん、恋人は作らないって…』
『それは、撤回するって言ったろ?』
『そ、それに…まだ今の自分に納得できていないって』
『それは…』

瞬間、小野崎さんの戸惑いが、垣間見れる。

そうだ。

自分だって、これから新しい目標に向かって、進まなきゃならない。

恋愛などしている時間も、恋人に時間を割いている時間もない。


ーーーー”それでも、私は…”


自分の感情が交差する。

『困ります…こんなの困る』

これから一人で頑張らないといけないのに。


ーーーー”小野崎さんと一緒にいたい”


誰かに頼るなんて、しちゃいけないのに。

『…エリ?』
『そんなの…だって…』

小野崎さんの重荷になんか、なりたくない。


ーーーー”この手を…放したくない”


『だって私、小野崎さんのことなんか、好きなんかじゃな…ッ!!』

最後の言葉を言う前に、掴まれた腕が強く引かれ、気づくと小野崎さんの胸に抱きしめられていた。

自分の左腕は小野崎さんの右手に掴まれたままで、彼の大きな左手が私の頭を包み込む。

それは、何か大事なものを包み込むように優しく、それでいて強く、腕の中に閉じ込めるように…。