明日、君を好きになる

『何?』
『放っておいてって言ったのよ!私が誰とどうなろうと、私の勝手でしょう?もう、私に構わないで!』

そう言い放ち、スクリと立ち上がると、駅とは反対方向に、公園の内側に向かって歩き出す。

決まった行き先などない。

ただ、目の前の小野崎さんから逃げたかった。

『おい!エリ待てよ』

慌てた小野崎さんに、直ぐに腕を取られるも、必死に抵抗する。

こうして向かい合うようにして立つと、自分よりずっと背の高い彼を、見上げるような形になってしまう。

『離して!』
『こんな時間に、どこ行くんだ』
『どこでもいいでしょ?子供じゃないし、一人でどこだって行けるわ』
『馬鹿か!子供じゃないから、心配なんだろ!』
『小野崎さんには、私がどうなろうと関係ないでしょ!』
『関係ないわけないだろッ』
『何でよ』
『何でって、そんなの君を…っ!!』

小野崎さんは、言いかけた言葉の先を一瞬言い淀み、次の瞬間、意を決したように真っすぐ私に視線を寄越す。

『君を、好きだからに決まってる』
『…!!』

小野崎さんの口から放たれたそのセリフは、一瞬にして私の身体を硬直させた。

まるで、魔法の呪文にでもかかったように、言葉さえも出てこない。

『…いい加減、察しろよ』

低く、それでいて優しい声音が、降ってきた。