いくつか出た挙式の中で、最初から新郎が祭壇にいるパターンもあったけれど、こんな風に皆の注目を浴びながら、新郎がバージンロードを一人で歩くのも、この後に控えている静粛な式典の緊張感を少しだけ和らげてくれているようで、ありがたい。

白いタキシードに身を包んだ藤川君は、祭壇の手前でこちらを振り返り、ゆっくり会釈する。

明朗快活で男勝りな沙也加と、どちらかというと物静かな印象の藤川君。

共に大学時代の友人である二人は、大学1年の時からの交際で、くっついたり別れたりを繰り返しながらここまでたどり着いた、まさに”10年愛”。

学生の頃から見てきた二人の結婚は、同窓である自分達にとっても、10年という長い月日を感じ、感慨深いものがある。

不意に、天井から心地よい鐘の音色が響き、花嫁の登場を知らせるアナウンスが流れると、列席者が一斉に、先ほど藤川君が現れた扉を振り返る。

重厚に出来ている扉は、さっきよりも更にゆっくりと開き、大きな歓声と共に、真っ白なウエディングドレス姿の沙也加が、父親の腕に手を添えて現れた。

思わず息をのむ。

眩いほどの光の中で、沙也加の少し高めの身長を生かすような、スレンダーラインのドレスを身に纏い、聖母のような笑みで真っすぐ前を見据える姿は、同性の私でもドキリとする美しさ。

『沙也加って、あんな綺麗だったっけ?』

隣で、独り言のようにつぶやいた千春の一言に、思わずうなずいてしまう。