「美術室の匂いって、お前の匂いだよな」 しばらくの沈黙の後、突然脈絡のない話題をふってくる。 「それってわたしがくさいってことじゃん……せめて臭いじゃなくて香りって言って」 美術室は絵の具の臭いが染み付いて、慣れない人にとってはあまりいい臭いではないはずだ。 「そうじゃなくて」と目を閉じて息を深く吸い込む仕草をした。 「懐かしいっていうのかな。匂いって一番記憶に残るらしいよ。きっと昔お前んちでかいだんだな」