「簡単に言うけど、あの人がどれだけ苦労したのか美咲は知らないのよ」
「それはそうかもしれないけど……夢みちゃいけないの?」
理解してもらえないことがつらくて苛立って、言ってはいけないことを口にしそうになる。
──母さんなんて結婚に失敗して、やりたくない仕事ばっかりして、わたしはそんなつまらない人生なんて嫌だ!
「とりあえずお母さんは仕事行くから、明日また話しましょ」
明日明日って……家にいないか、いても寝てるかどっちかじゃない。
せかせかとスニーカーを履いて扉の外に消えていく母さんの後ろ姿を、やるせない気持ちで見つめた。
