「あの、先生。ここにあった紫陽花の絵、どこ行ったかわかります?」


「ああ、あれね、売れたよ。すごく良く描けてたからね」


「えっ!?」


驚いて思わず手に持っていた額を取り落としそうになる。

まさか買ってくれた人がいるとは思ってもいなかった。


「ほんとですか!?どんな人が買ってくれたんですか?」


「うーん、見てなかったからわからないなぁ」




あの絵は文化祭には季節外れと分かっていながら、校庭の花壇で見つけた紫陽花をモチーフに描いたものである。

花弁から滴る雨上がりの雫が太陽の光を集めて、とても綺麗で心に残ったからだ。