その足音がわたしの心に響いてくるにつれ、わたしは小説の世界に逃げるようにして平然を装った。

その音は私にとっては耳障りなだけだから...

他の人にとっては心が弾む音だとしても...

そんなときわたしはいるも、小説の世界に逃げHRが始まることをただ待つしかできないんだ。

いくらわたしが引っ込み思案な性格だとしても隣の席に来るのだろうからかるく挨拶くらいはしなければならない。

別に、普通の挨拶程度ならきつく感じるようなことではない。そして、挨拶もしてほしいわけでもない。

態度の悪い子が隣の席でがっかりされたくないだけだ。

わたしのいる教室の扉が開く音が聞こえてその瞬間、教室中がわたしの予想通り騒ぎたった。

「おはようございます。」

これはわたしが明徳高校に入学してから聞きなれているクラス担任の河口先生の声。

いよいよ私が嫌な毎日が、始まろうとしていることを告げる声であった。

わたしはひとり教室の隅っこでゴクリと息をのみこんだ。

そして、HRの話の内容が聞こえないまま見たことのない人がわたしのクラスに入ってくる。