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雨が降った。
今日はお昼から空を厚く灰色の雲が覆っていて、朝のあの麗らかさは一体どこに行ったのかと思うほど、急激に冷え込み、そして激しい雨が降った。
駅まで歩いて行けるかしらと、昇降口から手をかざし…諦める。
この雨で傘もささずに歩くのは自殺行為だ。
風邪をひいてしまう。
それに、鞄の中の教科書もきっと濡れるだろう。私の持ち運びしている本も。
教科書はまだ許せるが、本が濡れるのだけは避けたい。
「どうしよう…止むまで待つしかないかな…」
「なにしてんの。つむちゃん。あ、もしかして、傘忘れた?」
困り果てていた私の後ろからぽんっと投げかけられた言葉は、少しハスキーな恒生のものだとすぐにわかった。
「…天気予報、見損ねちゃった」
「どじ」
けらけらと愉快そうに恒生が笑う。
人の不幸が楽しいだなんてなんてやつだ。
ああ、ほんとなんで天気予報見てこなかったんだろう…情けないな。
なんて思って恒生との沈黙の間。
雨の音でより一層沈黙が沈黙として私たちの間に横たわるのを肌でひしひしと感じる。
「貸そうか?」
唐突に、恒生はそういった。
「…え?」
「傘。俺、校内に一本ビニール傘置き忘れてたの忘れてて、今日折り畳みも持ってきてんの」
「いいの?」
「もちろん。男もんだからちょい大きめだけど、まあ小さいのよりはマシだろ」
はい、と言って渡されたのは折り畳み傘。
柄を握るとひんやりとした温度が手のひらにじわっと広がる。
「…ありがと」
「おう。じゃーな」
恒生は人気者だ。
不良っぽく見えるが、ルックスもいい。
でもなにより、根が優しい奴だから
だからみんな恒生に惹かれるんだろうなって私は思う。

