二、三時間も経つと先輩と雖も集中力が切れるらしく、私にちょっかいをかけてくる。
私が勉強している数学のノートの端っこに落書きをしたり、じーっと私のことを見つめて、ふと顔を上げて目があうとふにゃりと笑ったり
私の持ってくる本をぱらぱらと読んでみたり。そんな具合に。
クールで大人だと思っていたから、そんな先輩の少し子供のような一面が見られて、
胸の奥がじゅっと焼ける。
きゅんきゅんじゃない。
ぎゅんぎゅんだ。
先輩は自分の笑顔にどれだけ破壊力があるかなんてきっとわかってない。
わかってないから、そんなに簡単に私に微笑んだりできてしまうのだ。
もう、立派な罪人だと思う。
でもそんな胸の高鳴りが愛おしいと思っている私がいるのも事実。
いつまでも、夏休みが続いてほしいだなんて、そんな我儘なことを願ってしまう。
図書館の入り口に、夏祭りのポスターが貼ってある。
毎年、この田舎でやるには不釣り合いなほど大規模なお祭り。
花火もあがる。
ちょうど2週間後だ。
先輩は夏祭り、行くだろうか。
私ではない誰かと。
最近、先輩は帰る前にそのポスターを一瞥するから。
もしかしたら誰か行く人がいるのかもな、なんて。
先輩はきっと、モテるだろうから。
だから彼女がいたりしても不思議じゃないんだ。
私はやっぱり先輩のことをまだ知らない。

